東京垂直墓苑

所在地
日本東京都新宿区
種類
建築設計 / 商業プロジェクト
エリア
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ステータス
2016年デザインコンペティション
主催者
Arch Out Loud
A:I プロジェクトチーム
Dennis Lee, Sanna Lee, Zoe Lam

新宿の不動産価値が極めて高い特異な敷地において、都市の成長は垂直方向に進むのが常です。そこで、私たちの提案する東京垂直墓苑は、階層ごとに、遺骨壺ごとに、そして一歩ずつ上へと成長する形態を取ります。高さを形作るすべての段差は記憶の場となり、「階層」の概念は存在せず、動線と機能エリアの区別もなく、フロントエリアとバックエリアの区別すらありません。建物の本質は極限まで純粋であり、あらゆるステップが記憶の集合体として解釈されます。

靖国通りから少し離れた敷地に位置するため、私たちは意図的に敷地西側、山手線の高架下にエントランス広場を配置し、垂直構造体を新宿の喧騒に背を向けるように設計しました。隠された広場には、建物中央から鉄道へと流れ落ちる水の演出が支配的であり、水辺は上方の構造の幾何学を反映します。垂直墓苑に近づくにつれ、水の音が訪問者を周囲から切り離し、建物へと誘う効果を生み出します。建物自体が階段の集合体であるため、訪問者は階段を歩いて昇ることも、3基のエレベーターで目的地へ向かうことも可能です。エレベーターは放射状に配置されており、到着後の歩行距離を最小限に抑える設計になっています。

3基のエレベーターは強固な構造コアに収められ、それぞれの鉄筋コンクリートの階段はカンチレバー構造で支えられています。階段の周囲には反射性のある外装ガラスパネルが手すりの高さまで設置されており、建物を完全に囲むものではなく、訪問者のプライバシーを確保するための設計です。隣接する高層ビルから内部を明確に見ることはできず、訪問者は隙間から外の景色を楽しむことが可能となっています。さらに、各階のガラス間には広い開口部が設けられ、自然光と通風が最大限に確保されます。この設計により、機械設備を不要とし、天候による保護も不要とし、ハイテクな施工を排除しています。すべての不要な要素を取り除くことで、訪問者と自然、故人と記憶の間にある深い関係性を高める空間が実現されました。

階段を昇ることは、地上の物理的世界を離れ、精神的な目的地へと向かう旅です。その終着点は、空に開かれた屋上テラスであり、静かな思索の場として機能します。そして、降りる階段が物理的な世界へと訪問者を戻す転換点となり、完全な循環構造が生まれます。この垂直墓苑は、二重らせんのシンプルな動線設計を採用し、外装のガラス面はトップからボトムへ、またはその逆へと絡み合う2本のリボンとして表現されています。

垂直墓苑が都市の密集した環境にあることを理解しながらも、「完全に閉ざされた人工的な逃避空間」として設計することを拒否します。むしろ、「逃避」は訪問者一人ひとりの心の内側にこそ存在すると信じています。外界の音や明るい光が完全に遮断されるわけではないが、建築空間の内部は純粋であり、建築そのものがプログラム・動線・床・屋根・思想を構成しています。垂直墓苑は、周囲の環境を否定することなく、「雑音の中の静寂」「ストレスの中の安らぎ」「複雑の中のシンプル」「混沌の中の秩序」を提供する空間です。